社内のFAXを廃止すべきか、それとも残すべきか。取引先とのやり取りや紙の管理に手間を感じながらも、判断を先送りにしていないでしょうか。いざ検討を始めると、なぜ日本ではFAXが使われ続けているのかという疑問にも行き当たります。
結論からいえば、FAXは全社で一律に廃止する必要はなく、業務ごとに必要性を判断し、やめられないFAXは電子化して残す方法が現実的です。取引先が関わる業務は、自社だけでは廃止しにくいためです。本記事では、国内外の利用状況と使われ続ける理由、必要性を判断する基準、移行の進め方までをご紹介します。
目次
「FAXは日本だけ」は本当?国内外の利用状況と行政の動き
「FAXは日本だけ」といわれることがありますが、実際には海外でも業務での利用が続いています。一方、国内の家庭ではFAX機を持つ世帯が減り続けており、保有と利用のデータを分けて見ることが実態把握の近道です。ここでは公的統計と業界団体の調査、行政の動きから現状を確認します。
国内の世帯と職場におけるFAXの利用状況
総務省の「令和7年通信利用動向調査」によると、FAXの世帯保有率は23.5%でした(2025年8月末時点)。前年の24.5%から1ポイント下がり、家庭でのFAX離れは年々進んでいます。一方で、職場に目を向けると様子は変わります。
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の調査では、業務でFAXを利用している人は37.9%でした(2025年度)。2020年度の49.7%からは減少したものの、今も3人に1人以上が業務でFAXに関わっている計算です。
この2つの数値は、世帯の保有と有職者の業務利用という別々の指標です。調査の対象も方法も異なるため、数値どうしを単純に比較することはできません。家庭では減る一方で、職場では今も一定の割合で使われている、と読み分けるのが適切です。
参考:一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会「2025年度ファクシミリの利用調査結果 ~業務特性に応じた活用が続くファクシミリの現状~」
海外でもFAXは業務で使われている
CIAJは2023年に米国、2024年にドイツでも同種の調査を実施しています。業務でFAXを使う人の割合は米国で69.0%、ドイツで50.7%と、いずれも同時期の日本を上回る水準でした。調査の時期も対象も国ごとに異なるため単純な順位付けはできませんが、主要国の業務現場でFAXは依然として現役の連絡手段です。日本だけが特殊だという見方は、実態よりも印象が先行しています。
参考:一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会「ドイツにおけるファクシミリの利用調査結果を公開 ~ドイツでは今でも5割の方がファクスを利用!~」
ビジネスでFAXが使われ続けるのはなぜ?4つの理由
ビジネスでFAXが使われ続ける背景には、取引先との関係を中心とした4つの理由があります。単なる古い習慣ではなく、業務の仕組みに組み込まれているため、簡単には置き換えられないのが実情です。ここでは4つの理由を順に解説します。
取引先の業務フローがFAX前提になっている
最も大きい理由は、取引先の受発注や連絡の流れがFAXを前提に組み立てられていることです。自社だけがやめると相手に切り替えの負担を求めることになり、取引関係への影響を考えて現状維持を選ぶ企業は少なくありません。FAXの廃止を自社だけでは決められない構図が、ここにあります。
特に、取引先の数が多く1社あたりの発注頻度が低い取引では、専用の電子データ交換の仕組みを整える費用対効果が合いにくく、FAXが残りやすい傾向があります。小売業や卸売業、製造業の現場では、こうした事情が今も広く見られます。
紙のまま書き込みや回覧ができる
受信したFAXにそのまま手書きで指示を書き込み、関係者に回覧できる点も現場では重宝されています。小売や製造の現場のように1人1台のパソコンが行き渡っていない職場では、紙のほうが情報を共有しやすい場面が残っているためです。
押印が必要な書類の扱いも同様です。FAXであれば、印刷して押印し、そのまま原稿として送信できます。メールに切り替えると印刷、押印、スキャンという手順がかえって増える場合があり、こうした事情もFAXが選ばれ続ける一因になっています。
送信結果を確認しやすく記録も残る
FAXは送信結果が通信の記録として残り、相手に届いたかどうかを確認しやすい通信手段です。送信票や通信管理レポートを保管しておけば、送った・送っていないという行き違いが起きたときの確認材料になり、取引の証跡を残したい業務との相性も良好です。
一方のメールは、迷惑メールへの振り分けや見落としで相手に気づかれないことがあります。確実に届けたい書類はFAXで送るという運用を続ける企業もあり、確実性を重視する業務ほど、FAXからの切り替えは慎重になりやすいのが実情です。
導入や操作のハードルが低い
FAXは原稿をセットして番号を押すだけで送信でき、特別な機器の設定や知識がなくても扱えます。新しいシステムのように操作研修やアカウントの管理が必要ないため、パートやアルバイトを含めて従業員の入れ替わりが多い職場でも運用しやすい手段です。
FAXはいらない?不要といわれる3つの理由
一方で、FAXが不要といわれる背景には、紙の運用に伴う負担という明確な理由があります。課題は費用面、働き方、情報管理の3つの面に集中しており、裏を返せばこの3点が業務の効率化につながる余地にあたります。ここでは3つの理由を順に見ていきましょう。
印刷・保管・回線の費用が発生し続ける
FAXを紙で運用する限り、用紙やトナーなどの印刷費と、FAX用の電話回線の基本料金が発生し続けます。1件あたりの金額は小さくても、受信枚数の多い職場では年間で見過ごせない額になり、拠点が増えればその分だけ費用も重なります。
費用として見えにくいのが保管の負担です。受信したFAXをファイリングして保管し、必要なときに探し出す作業には、保管場所と作業時間の両方がかかります。書類がたまるほど、探す時間という隠れた負担も膨らみ、担当者の業務を圧迫していきます。
確認や送信のために出社が必要になる
紙のFAXは、受信の確認も送信の操作も、FAX機が設置された場所でしか行えません。そのため、リモートワークの日にFAXの確認のためだけに出社するといった状況が生まれ、せっかく整えた柔軟な働き方を制約する要因になってしまいます。担当者の不在中に届いたFAXが、その日のうちに誰にも気づかれないこともあります。
誤送信や紙の放置による情報漏えいリスク
FAXには、番号の押し間違いによる誤送信で、個人情報や取引情報が意図しない相手へ届いてしまうリスクがあります。紙で出力される仕組み上、届いた先で誰の目に触れるかを送信側で制御できない点も、情報管理のうえでは無視できません。
受信側でも、出力された紙が受信トレイに放置されれば、無関係な人の目に触れたり紛失したりするおそれがあります。運用ルールの整備である程度は抑えられるものの、紙が介在する限り、こうしたリスクをゼロに近づけるのは難しいのが実情です。
FAXの必要性を判断する3つの基準
自社にFAXが必要かどうかは、3つの基準に分けて考えると判断しやすくなります。具体的には、①取引先の状況、②送受信の量と用途、③働き方と拠点数の3点です。感覚ではなく事実を書き出して確かめることが、廃止か継続かの議論を前に進める第一歩になります。次の表は、3つの基準ごとに廃止しやすい状態と廃止しにくい状態を対比したものです。
| 判断する軸 | 廃止しやすい状態 | 廃止しにくい状態 |
| ①取引先の状況 | FAXの相手が数社程度 | 主要な取引先がFAX前提 |
| ②送受信の量と用途 | 月に数枚で用途が限定的 | 毎日届く受発注業務 |
| ③働き方と拠点数 | 単一拠点で出社が中心 | リモートワークや複数拠点 |
①取引先のFAX利用状況から考える
まず確認したいのは、FAXでやり取りしている取引先の数と、その取引の重要度です。FAXの相手が特定の数社に限られているなら、個別に相談してメールなどの別の手段へ切り替えられる可能性があり、廃止に向けた道筋を描きやすくなります。
一方、主要な取引先の多くがFAXを前提としている場合、全面的な廃止は現実的ではありません。この場合は、取引先向けのFAX窓口を残しながら、社内の受信確認や保管の処理だけを電子化していく方向が検討の軸になります。具体的な方法は後述します。
②月間の送受信枚数と用途から考える
次に、月間の送受信枚数と、どの業務でFAXを使っているかを書き出してみます。枚数が月に数枚程度で用途も限られているなら、コンビニエンスストアのFAXなどで代替し、FAX機と専用の回線を手放すという選択肢が現実的な候補になります。
反対に、受発注のように毎日FAXが届く業務では、廃止そのものよりも処理の効率化のほうが先に取り組むべき課題になります。枚数が多いほど印刷や仕分けの負担も大きくなるため、後述する電子化による改善効果が出やすい領域だといえます。
③働き方と拠点数から考える
リモートワークの導入状況や拠点の数も判断材料になります。オフィスの外で働く人が、FAX対応のためだけに出社しているケースも見られます。場所を選ばずに送受信を確認できる仕組みへ移行すれば、働き方と業務の両方を改善できるでしょう。
拠点が複数ある場合は、拠点ごとにFAX機と電話回線を維持する費用の合計も比較の対象になります。拠点数が多いほど、同じ設備を重複して抱えている状態になりやすい点にも注意が必要です。 働き方と拠点数の両面から見て、現在の運用が業務の実態に合っているかを、この機会に一度確かめてみてください。
ここまでの取引先の状況、送受信の枚数と用途、働き方と拠点数という 3つの基準で現状を書き出せば、取るべき方針はおのずと絞られてきます。
FAXの廃止・移行を進める方法
FAXの見直しは、一斉の全面廃止ではなく段階的な移行として進めるのが現実的です。やめられる業務から順に代替手段へ切り替え、やめられない業務は電子化して残すという2本立てで考えれば、取引先に余計な負担をかけずに見直しを進められます。
利用状況の棚卸しと移行計画から始める
最初に取り組みたいのが、利用状況の棚卸しです。どの業務で、どの取引先と、月に何枚のFAXをやり取りしているかを一覧にまとめます。この一覧をもとに、やめられる業務と残さざるを得ない業務を仕分けし、移行の優先順位を付けていきます。
やめられると判断した業務については、取引先への案内時期と、代替手段への切り替え時期を含めた移行計画を立てます。あわせて社内への周知と運用ルールの整備も進めておくと、切り替えた後の問い合わせや現場の混乱を防ぎやすくなります。
FAXの代替となる手段の類型
FAXの代わりとなる手段には、いくつかの類型があります。大きくは、メールやクラウドストレージなどの一般的なツールと、FAXの仕組み自体を電子化するインターネットFAXに分けられます。次の表は、代表的な手段の費用の目安と向いている場面、注意したい点をまとめたものです。
| 手段 | 費用の目安 | 向いている場面 | 注意したい点 |
| メール・チャット | 既存環境なら追加費用は小さい | 社内連絡や資料の共有 | 相手側の切り替えが前提 |
| クラウドストレージ | 無料枠あり、容量に応じ課金 | 大容量データの受け渡し | 取引先の利用可否に依存 |
| インターネットFAX | 月額基本料と送受信枚数で課金 | FAXの相手が残る取引 | 番号が変わる場合がある |
やめられないFAXは電子化して残す
取引先の都合で廃止できないFAXは、廃止か継続かの二択ではなく、電子化して残すという第3の選択肢で考えられます。インターネットFAXを使えば、相手は従来どおりFAX機を使ったまま、自社側はサービスが提供している管理画面上でFAXの送受信が可能となります。
受信したFAXは電子データとして届くため、印刷せずに内容を確認し、そのまま保存できます。リモートワーク中の確認や複数拠点での共有もしやすくなり、廃止できない業務を抱えたままでも、紙の運用に伴う負担を段階的に減らしていけます。
関連ページ:インターネットFAXとは|仕組み・メリットを解説【MOVFAX】
インターネットFAXの利用を始めるまでの流れ
インターネットFAXは、Webから申し込んで受信用のFAX番号の発行を受ける流れが一般的です。移行先の候補の一つに、法人向けのインターネットFAXサービス「MOVFAX(モバックス)」を提供しております。
インターネットFAXでは、サービス提供元から新しいFAX番号が発行されるため、原則としてFAX番号は変わります。回線ごと解約する場合は取引先への案内が欠かせません。ただし既存の複合機に自動転送機能があれば、既存の回線を維持したまま現在のFAX番号でFAXを受け取れる場合もあります。
MOVFAXの基本となるプランは初期費用1,000円、月額基本料金980円(いずれも税抜・2026年8月時点)です。これに送受信の枚数に応じた料金が加わります。受信は1か月1,000枚までは追加の料金がかかりません。料金や仕様は改定されることがあるため、申し込み前に公式サイトでご確認ください。
関連ページ:インターネットFAX【MOVFAX】の料金・プラン
まとめ
FAXを廃止すべきかどうかは、全社一律ではなく、業務ごとに必要性を見極めて判断するのが現実的です。国内では家庭のFAXが減り続ける一方、職場では今も一定の割合で使われており、取引先が関わる業務は自社の判断だけではやめられないためです。
判断の基準は、取引先の利用状況、月間の送受信枚数と用途、働き方と拠点数の3つです。やめられる業務は代替手段へ移し、やめられないFAXは電子化して残せば、紙の運用に伴う負担は段階的に減らせます。まずは直近1か月のFAXの枚数と相手先を書き出すことから始めてみてはいかがでしょうか。