取引先との受発注業務をはじめ、回覧のしやすさなどの利点もあり、商習慣としてFAXを使う場面はまだ多く残っています。一方で、届いたFAXを印刷し、担当者ごとに仕分けて配る作業に、想像以上の時間を取られていないでしょうか。用紙やトナーの補充から過去のFAXを探す時間まで含めると、紙の運用にかかる負担は決して小さくありません。
こうした負担を減らす方法として広がっているのが、FAXを紙に印刷せず電子データのまま扱うペーパーレスFAXです。取引先の都合でFAXそのものをやめられない場合でも、受信・送信・管理を電子化すれば、紙の運用は減らせます。取引先に運用の変更を求める必要はなく、これまでどおりFAXを利用できます。自社側の運用を切り替えるだけで始められる点もメリットです。本記事では、ペーパーレスFAXの基本から、実現するための3つの方法とその比較、自社に合う選び方、導入前に確認しておきたい注意点までをご紹介します。どの方法が自社に適しているかを判断する材料として、また社内で検討を進める際の資料としてご活用ください。
目次
ペーパーレスFAXとは
ペーパーレスFAXとは、受信・送信したFAXを紙に印刷せず、電子データのまま扱う運用方法です。FAXのやり取り自体はこれまでどおり続けながら、紙の出力と保管だけをなくす点が特徴です。特別な言い換えではなく、FAX業務の進め方そのものを指す言葉として使われています。
紙のFAX運用との違い
従来のFAX運用では、受信と同時に用紙へ出力され、その紙を担当者へ配り、ファイルに綴じて保管する流れが基本でした。紙が業務の起点になるため、出社しなければ内容を確認できません。ペーパーレスFAXでは、受信したFAXがPDFなどのデータとして届き、画面上で確認できるため、印刷の工程がなくなります。仕分けは残りますが、送信元ごとの振り分けを設定できるサービスであれば自動化できます。
どちらの運用でも、FAXを送ってくる取引先の手順は変わりません。相手側に新しい機器や操作を求めずに、自社側の送受信の方法方だけを変えられる点が、切り替えのハードルを下げています。この点は、取引先の数が多い企業ほど効いてきます。
受信・送信・保管で変わること
変化は受信だけにとどまりません。送信でも、パソコン上のファイルをそのまま送れるようになるため、書類を一度印刷してからFAX機に通す手順が不要になります。保管の面では、電子データのままフォルダに分類でき、日付や取引先名で検索できます。
紙のファイルを1枚ずつめくって探していた作業が、画面上の検索で済むようになります。一方で、手書きの書類を送るときはスキャンの手間が生じるため、紙の運用が残る部分もあります。どこまで電子化するかは、業務の内容に応じて決めることになります。
FAXを代替手段に置き換える場合との違い
FAX業務を見直す方法には、ペーパーレスFAXのほかに、FAX自体をやめてメールやチャットなどの代替手段へ移行する選択肢もあります。ただし代替手段への移行は、取引先の合意と相手側の運用変更を伴うため、実現までに時間がかかる傾向があります。送受信の相手が多いほど、調整の負担も大きくなります。
ペーパーレスFAXは、取引先とのやり取りはFAXのまま、自社側の送受信をデータ化する方法です。代替手段への移行が難しい取引先が残る場合でも、自社側から先に紙の運用を見直せます。将来的にFAXの廃止を検討する場合の、現実的な中間段階としても位置づけられます。
ペーパーレスFAXで業務効率化できること
ペーパーレスFAXの導入で見込めるのは、印刷費用の削減にとどまらない業務全体の効率化です。なかでも変化が大きいのは、印刷費用と作業時間の見直しです。紙をなくすことで、消耗品の費用だけでなく、FAXを扱う一連の作業にも変化が生じます。ここでは、どの部分がどのように変わるのかを3つの観点から解説します。
用紙・トナーなどの印刷コスト削減
受信したFAXを印刷しなくなると、用紙やトナー、インクの消費が減ります。営業目的のFAXダイレクトメールまで自動で出力されていた場合は、その分の削減幅も大きくなります。削減できる金額は、月間の受信枚数や現在の機器によって変わります。
導入前に、直近数か月の受信枚数と用紙・トナーの購入実績を確認しておくと、効果を見積もりやすくなります。複合機をリースしている場合は、印刷枚数に応じて発生する保守料金の内訳もあわせて確認しておくと、費用を正確に比べられます。
仕分け・保管・検索にかかる業務改善
紙のFAXでは、届いた書類を誰かが定期的に確認し、担当者ごとに配る作業が発生します。1回あたりは数分でも、1日に何度も繰り返せばまとまった時間になります。電子データであれば、受信したFAXを取引先や担当者ごとのフォルダへ分けて保管できます。
過去のFAXも検索で呼び出せるため、書庫や書類棚を探し回る時間を減らせます。仕分け・保管・検索の見直しは、紙を前提としたFAX業務全体の改善につながります。受信したFAXをデータのまま扱えれば、OCR(画像から文字を読み取る技術)を使った受注入力の省力化にもつなげやすくなります。
リモートワークや外出先からのFAX確認
紙のFAXは、オフィスにある機器の前に行かなければ内容を確認できません。外出が多い担当者や、リモートワークを取り入れている企業では、この点が対応の遅れにつながることがあります。急ぎの注文や見積依頼ほど、確認の遅れが影響しやすくなります。
電子データで受け取る運用に切り替えると、通信環境があれば外出先や自宅からでも内容を確認できます。ただし端末や通信、サービスの稼働状況によっては利用できない場合もあります。確認手段を複数用意し、社内での連絡方法もあわせて決めておくと安心です。
受信FAXをデータ化する3つの方法
受信したFAXをデータ化する方法は、大きく3つに分かれます。必要な機器と初期費用がそれぞれ異なるため、まずは仕組みを把握することが選定の出発点になります。ここでは、それぞれの特徴と、費用の考え方をあわせて解説します。自社の状況に近いものから読み進めてください。
複合機の受信データ保存機能を使う
1つ目は、いま使っている複合機の機能を活用する方法です。受信したFAXを印刷せず、社内のパソコンや共有フォルダ、メールへ転送する設定にすることで、紙の出力を止められます。FAX機と電話回線をそのまま使い続けるため、番号が変わらず、新しいサービスの契約も不要です。固定電話は2024年1月にIP網へ移行しましたが、利用中の電話機は切り替え後も使用できます。
一方で、機種によっては転送機能に対応していない場合があり、回線の基本料や通信費は引き続き発生します。設定の変更が必要になるため、複合機の保守を依頼している会社に、対応の可否と作業費用を確認しておくと確実です。まずは手元の機種名から確認してみてください。
インターネットFAXを使う
2つ目は、インターネット回線を通じてFAXを送受信するサービスを利用する方法です。専用のFAX機や電話回線を用意せず、パソコンやスマートフォンから送受信と管理を行います。月額料金は発生しますが、機器の購入やリース、回線の維持費が不要になります。
新しくFAX番号を取得する形が一般的なため、現在の番号をどう扱うかは事前の確認が必要です。番号の扱いについては、後半の注意点でくわしく解説します。既存の番号を使い続けたい場合は、早い段階で確認しておくと計画が立てやすくなります。
FAXサーバーやFAX受信システムを導入する
3つ目は、自社にFAXサーバー(FAXの送受信を自社で管理する仕組み)を構築したり、基幹システムと連携するFAX受信システムを導入したりする方法です。受注データの自動取り込みなど、FAX業務そのものの自動化まで踏み込めます。
その分、初期費用と構築期間がかかり、運用にも社内の体制が必要になります。1日あたりの受信枚数が多く、基幹システムとの連携まで見据えている中堅・大企業に適した選択肢です。受信枚数がそれほど多くない場合は、ほかの2つの方法から検討するほうが現実的です。3つの方法の違いを、必要な機器と費用の観点からまとめます。
| 自社の状況 | 適した方法 |
| 受信が月数十枚で担当者が固定 | 複合機の受信データ保存 |
| 受信量が多く複数人で分担 | インターネットFAX |
| 拠点複数・リモートワークが多い | インターネットFAX |
| FAX機と電話回線をなくしたい | インターネットFAX |
| 基幹システムに取り込みたい | FAXサーバー |
自社に合う方法を選ぶ判断基準
どの方法が適しているかは、FAXの利用状況によって変わります。ここでは、送受信枚数・働き方・既存機器の3つの軸から判断の考え方を解説します。いずれも、いまの運用を振り返れば確認できる項目です。特別な調査をしなくても、直近の実績から判断できます。
月間の送受信枚数と利用人数から考える
まず確認したいのが、月間の送受信枚数です。枚数が少ない場合は複合機の設定変更で足りることが多く、月額料金を新たに負担する必要がありません。受信枚数が多く、複数の担当者で分担している場合は、フォルダ分けや振り分けができる仕組みがあると効果を実感しやすくなります。
何人が日常的にFAXを扱うのかも、あわせて確認しておきます。利用人数が多いほど、閲覧権限やフォルダの設計が必要になり、そこに対応できる仕組みかどうかが選定の分かれ目になります。1人で完結する運用とは、求められる機能が変わります。
拠点数と働き方から考える
拠点が複数ある場合や、リモートワーク・外出が多い場合は、場所を問わず確認できる仕組みが必要になります。この条件では、インターネットFAXやFAX受信システムが候補になります。一方、担当者が常時オフィスにいて、FAXの確認が特定の部署に限られている場合は、複合機の設定変更でも支障が出にくくなります。
既存のFAX機を残すかどうかで考える
FAX機や複合機を今後も使い続けるかどうかは、方法選びを大きく左右します。機器を残すのであれば複合機の機能活用が現実的で、機器と回線をなくしたいのであればインターネットFAXが選択肢になります。なお、複合機のリース契約や回線契約の期間が残っている場合は、途中解約の条件も確認しておく必要があります。
切り替え時期を契約更新のタイミングに合わせる方法もあります。契約満了の時期から逆算して検討を始めると、無駄な費用が生じにくくなります。ここまでの判断軸を、状況別に当てはめると次のようになります。自社に近い行を起点に、前の表とあわせてご確認ください。
| 自社の状況 | 適した方法 |
| 受信が月数十枚で担当者が固定 | 複合機の受信データ保存 |
| 受信量が多く複数人で分担 | インターネットFAX |
| 拠点複数・リモートワークが多い | インターネットFAX |
| FAX機と電話回線をなくしたい | インターネットFAX |
| 基幹システムに取り込みたい | FAXサーバー |
ペーパーレスFAXのデメリットと注意点
ペーパーレスFAXには、導入前に把握しておきたい費用や運用面の制約もあります。切り替えてから気づくと、社内調整に時間がかかることもあります。ここでは、検討の段階で確認しておきたい4つの点を解説します。通信環境やサービスの稼働状況によっては一時的に利用できない場合がある点も、あわせて押さえておいてください。
月額料金を含めて費用対効果を確認する
インターネットFAXやFAX受信システムを利用する場合、月額料金や送受信ごとの料金が発生します。用紙やトナーの費用が減っても、送信枚数が多い業務では総額が想定を上回ることがあります。導入前に受信枚数と送信枚数を分けて把握し、想定される月額を試算しておくと判断しやすくなります。
削減額は利用状況で変わるため、自社の数値で確認することが大切です。あわせて、複合機のリース料や回線の基本料など、削減できる費用も並べて比べると、判断の精度が上がります。試算は月単位でそろえると比べやすく、社内での合意も得やすくなります。
手書き業務と社内の運用ルールを洗い出す
受信したFAXに手書きでメモを加える、押印して返送するといった運用がある場合は、そのままの形では電子化できないことがあります。サービスによっては画面上で文字やスタンプを追加できますが、対応範囲は事前の確認が必要です。押印の要否や返送の方法は、取引先によって異なります。
また、送信側で手書きの書類を扱う場合は、スキャンしてデータ化する工程が残ります。どの業務を電子化し、どの業務を紙のまま残すかを先に決めておくと、切り替え後の混乱を防ぎやすくなります。すべてを一度に変えず、受信だけ先に電子化する進め方もあります。
あわせて、誰がどのFAXを閲覧できるようにするかも、切り替え前に決めておきます。操作方法や閲覧権限の設定を担当者へ周知しておくと、切り替え後の問い合わせに対応しやすくなります。運用の担当者を決めておくと、社内の混乱を抑えられます。
現在のFAX番号をどう扱うか確認する
インターネットFAXへ切り替える場合、現在使っているFAX番号をそのまま受信用の番号として引き継げるとは限りません。新しい番号が割り当てられる形が一般的です。現在の番号を残したい場合は、契約している電話会社の着信転送サービスを利用して、新しい番号へ転送する方法があります。
ただし転送サービスには別途料金がかかる場合があり、提供条件やサポートの範囲は電話会社によって異なります。インターネットFAX側のサポート対象外となることもあるため、契約前に電話会社へ確認しておくと確実です。転送の可否は、回線の種類によっても変わります。
取引先への番号変更の案内が必要になるケースもあります。案内の方法と時期を決めておくと、切り替え直後の連絡漏れを防げます。案内先の一覧は早めに作成しておくと、スケジュールを立てやすくなります。主要な取引先から順に案内すると、混乱を抑えられます。
電子帳簿保存法の保存要件を確認する
注文書や請求書などの取引情報をデータでやり取りした場合、電子帳簿保存法上の電子取引に該当することがあります。該当する場合は、そのデータを定められた要件に沿って保存する必要があります。保存要件は、書類の種類や受領方法、社内の体制によって異なります。
制度の内容は改正されることもあるため、国税庁が公開している最新の情報や、顧問の税理士など専門家に確認したうえで進めてください。判断に迷う場合は、社内だけで結論を出さずに相談する形が安全です。保存方法を決めてから運用を始めると、後戻りが少なくなります。
なお、ペーパーレスFAXのサービスを導入することと、電子帳簿保存法への対応が完了することは同じではありません。保存の仕組みと社内ルールをあわせて検討する必要があります。サービスの機能だけで判断しないようご注意ください。導入と法対応は、別の検討事項として扱ってください。
インターネットFAXを始めるときの進め方
3つの方法のうち、FAX機と電話回線をなくしたい場合に選ばれやすいのがインターネットFAXです。ここでは、申し込みから利用開始までの流れと、実際の運用イメージをご紹介します。導入までに何が必要かを把握する材料としてご覧ください。
申し込みから利用開始までの流れ
インターネットFAXは、多くの場合、WEBサイトから申し込み、本人確認書類の提出と支払い方法の登録を経て、受信用のFAX番号の発行を受けて利用を開始します。工事や専用機器の設置が不要なサービスも多く、比較的短い期間で使い始められます。申し込みから利用開始までに数営業日かかる場合もあります。
ただし、必要な手続きやFAX番号の扱い、利用開始までの期間はサービスによって異なります。現在のFAX番号をそのまま使えるか、取引先への番号変更の案内が必要かといった点も含め、申し込み前に確認しておきましょう。
MOVFAXを利用する場合の手続きと費用
法人向けのインターネットFAXサービス「MOVFAX(モバックス)」も、WEBサイトからの申し込みで利用を開始できます。基本となるプランは初期費用1,100円、月額基本料金1,078円(いずれも税込)で、これに送受信の枚数に応じた料金が加わります。送受信の枚数に応じた料金の詳細や、複数の担当者で管理する場合に向けた上位のプランの内容は、下記のページにまとめています。
関連ページ:インターネットFAX【MOVFAX】の料金・プラン
まとめ
ペーパーレスFAXは、FAXのやり取りを続けながら紙の出力と保管だけをなくす運用方法です。用紙やトナーの費用に加えて、仕分けや保管、書類を探す時間の見直しにつながります。導入する方法は、複合機の受信データ保存機能、インターネットFAX、FAXサーバーやFAX受信システムの3つです。
月間の送受信枚数、リモートワークを含む働き方、既存のFAX機を残すかどうかという3点を確認すれば、自社に合う方法を絞り込めます。あわせて、費用対効果、手書き業務の扱い、FAX番号の引き継ぎ、電子帳簿保存法への対応の4点を確認しておくと、切り替え後の想定外を防ぎやすくなります。まずは直近の受信・送信枚数を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。